File #1 オレニアイヲモトメルナ

 あれは暑い暑い夏だった。そう、98年の8月だったか・・・。そういえばその日は、昼間から妙な空気が漂っていた。
 泊りがけのキャンプに向かっていた私達が山奥に差し掛かった頃、突然1台の車に異変が走った。突然左にハンドルがとられ、そして走行不能に陥った。原因はパンクだったが、それを修理している私達に、非常にも雨が襲い掛かった。この先の事件を暗示するように。誰もがこの旅に不安を感じただろう。そして、あの事件は起きた・・・。

 キャンプ1日目の夜も更けた頃、空は相変わらずの曇天だったが、旅は無事に進んでいたかに見えた。昼間にパンクを起こした車には、M氏とI氏が乗り込んで雑談をしていたが、これから起こりうる事件には、全くの無警戒だったようだ。夜半を過ぎ、車中の二人が睡魔に襲われて眠りに就きつつあった頃、ついに忌まわしき事件は起こった。
 何かに取り憑かれたように、M氏が突然上体を起こし、こう叫んだのだ。
 「オレニアイヲモトメルナ!」
 突然の出来事に、I氏は理解をする事ができず、ただただ呆然とするばかりだったという。

 オレニアイヲモトメルナ
 おれにあいをもとめるな!?
 そうだ、「俺に愛を求めるな」だ!
 事件後、私はこの衝撃の発言の解読に躍起になったが、その言葉の意味には辿り着けても、その真相には辿り着くことができなかった。私が解くことのできなかった、数少ない事件である。